COBOL資産を安全に最新化!テスト自動化とリグレッション管理の極意
生徒
「先生、古いCOBOLのプログラムを新しく作り直したり場所を移したりする時、正しく動いているか確認するのがすごく大変だと聞きました。」
先生
「その通りです。何十年分もの膨大な処理が、一箇所直しただけで別の場所がおかしくなっていないか確認するのは、人間の手だけでは限界がありますね。」
生徒
「それを解決するのが『テスト自動化』や『リグレッション管理』というものですか?」
先生
「そうです!最新の技術を使って、効率よく、かつ確実に品質を守るための仕組みです。初心者の方にも分かりやすく説明しますね。」
1. テスト自動化とは?
テスト自動化(てすとじどうか)とは、これまで人間が手作業で行っていた「プログラムが正しく動くかどうかの確認」を、専用の道具(ツール)を使ってコンピュータに自動でやらせることです。
パソコンを触ったことがない方への例えとして、「計算ドリル」を想像してください。 これまでは先生(人間)が一人一人の答えを赤ペンで丸付けしていましたが、テスト自動化は「全自動採点機」を導入するようなものです。 ボタン一つで何千、何万という計算結果が正しいかどうかを一瞬で判定してくれます。
COBOLのシステムは非常に規模が大きく、手作業では何ヶ月もかかる確認作業も、自動化することで数時間、早ければ数分で終わらせることができるようになります。
2. リグレッション(退行)管理の重要性
リグレッション(退行)とは、プログラムの一部を直したときに、全く関係ないはずの別の場所で不具合(バグ)が発生してしまう現象のことです。 日本語では「デグレード(先祖返り)」とも呼ばれます。
例えば、料理のレシピで「塩加減を少し変えただけなのに、なぜか全体の火の通り具合までおかしくなった」というような、予期せぬ悪影響のことです。 リグレッション管理とは、この悪影響が起きていないかを厳密にチェックし、常に「以前と同じ品質」を保つための管理作業を指します。
3. 旧資産(レガシー資産)ならではのテストの悩み
昔から使われているCOBOL資産には、現代のプログラムにはない特有の難しさがあります。
- ドキュメントがない: 設計図が残っていないため、何が「正解の動作」なのか、古いプログラムを読み解くしかありません。
- データが複雑: 銀行の利息計算のように、非常に細かい数字のルールが無数に組み合わさっています。
- 画面がない処理が多い: 背景で動く「バッチ処理」が多く、目に見えない部分での確認が必要です。
こうした悩みを解決するために、現代のモダナイゼーション(近代化)プロジェクトでは、古い環境と新しい環境で同じデータを流し込み、結果を突き合わせる手法がよく取られます。
4. 「現新比較」という最強のテスト手法
COBOLのテスト自動化で最も効果的なのが現新比較(げんしんひかく)です。 これは、「今の環境(現)」と「新しい環境(新)」の両方で同じ計算をさせ、その結果が1円、1文字の狂いもなく一致するかをツールで自動判定する方法です。
例えば、以下のようなCOBOLコードの出力結果を比較します。
* 現在のプログラムでの出力
DISPLAY "CUST-ID: 12345, SALES: 0050000"
* 新しいクラウド環境に移した後の出力
DISPLAY "CUST-ID: 12345, SALES: 0050000"
もし、新しい環境で計算ロジックが間違っていて、数字が1円でもズレていれば、ツールが即座にエラーとして教えてくれます。
【比較エラー発生】
期待値:SALES: 0050000
実際値:SALES: 0049999
→ 7行目の計算ロジックを確認してください。
5. テスト自動化導入の3つのメリット
工数の削減
これまで人が画面をじっと見て確認していた時間をゼロにできます。浮いた時間で、より重要な新しい機能の開発に集中できます。
ヒューマンエラー防止
人間は疲れると見落としをしますが、ツールは24時間365日、常に同じ基準で正確にチェックを繰り返してくれます。
何度でも実行可能
一度自動化の仕組みを作れば、プログラムを1行直すごとに全てのテストをやり直すことができ、安心感が格段に増します。
6. 難しい専門用語を優しく解説
ITの現場で飛び交う言葉も、例え話で理解すれば怖くありません。
- CI/CD(シーアイ・シーディー)
- プログラムを直したら、すぐに自動でテストして、すぐに使える状態にする「自動ベルトコンベア」のような仕組みのことです。
- テストエビデンス
- テストをした証拠のことです。「ちゃんと確認しましたよ」という証明写真のようなものです。
- カバレッジ
- プログラム全体の何パーセントをテストしたかという指標です。「網羅率(もうらりつ)」とも言います。
- モック(擬似環境)
- テストをしたい場所以外の機能を、仮の返事をするだけの「身代わり」に置き換えることです。
7. リグレッション管理を成功させるコツ
ただ自動化ツールを入れるだけでは成功しません。大切なのは「テストデータの鮮度」と「範囲の絞り込み」です。
全てのテストを毎回やるのは効率が悪い場合もあります。「今回はここを直したから、影響があるこの範囲を重点的にテストしよう」という戦略的な判断をツールと組み合わせることで、さらにスピードが上がります。
また、過去に起きた不具合のパターンをテスト項目として蓄積していくことで、同じ間違いを二度と繰り返さない「成長するテスト環境」を作ることができます。
8. 未来に向けたテストの姿
最近ではAIを使って、「どこに不具合が起きやすいか」を予測したり、テストのためのデータを自動で作り出したりする技術も進化しています。
COBOLという伝統的な資産を守り、次の世代へ引き継いでいくためには、こうした最新の「守りの技術」が必要不可欠です。 「古いから確認が大変だ」と諦めるのではなく、最新の自動化技術を味方につけることで、レガシーシステムはより強固で信頼性の高いものへと生まれ変わるのです。