COBOLバッチ処理を現代化!再設計と運用改善のアプローチを徹底解説
生徒
「先生、COBOLのシステムでよく聞く『バッチ処理』って何ですか?夜中にコンピュータが頑張って動いているイメージがあるのですが…。」
先生
「バッチ処理とは、大量のデータを一括でまとめて処理する方法のことです。例えば、一ヶ月分の電気代を全員分まとめて計算するような作業ですね。」
生徒
「なるほど!でも、そのバッチ処理が長すぎて朝まで終わらないってニュースで見たことがあります。それを直すのが『再設計』ですか?」
先生
「その通りです!古いやり方を見直して、今の時代に合った効率的なバッチ処理に作り変えるコツを、これから詳しく解説しますね。」
1. バッチ処理とは?基本概念を初心者向けに解説
バッチ処理(Batch Processing)とは、一定期間に溜まったデータを「ひとまとめ」にして、一気にコンピュータに処理させる方式のことです。 プログラミング未経験の方に例えると、「溜まった洗濯物を週末にまとめて洗濯機にかけること」によく似ています。
これに対して、スマホで買い物をしてその瞬間に注文が確定するような処理は「リアルタイム処理」や「オンライン処理」と呼ばれます。 銀行の利息計算や、会社の給与計算、大規模な在庫管理など、正確さが求められる大量の事務作業には、今でもCOBOL(コボル)によるバッチ処理が欠かせません。
しかし、数十年前の古い設計のまま使い続けていると、データ量が増えすぎて処理が終わらなくなる「バッチ突き抜け」という問題が発生することがあります。 これを防ぐために、バッチ処理の再設計(リデザイン)と、日々の動かし方を良くする運用改善が必要になるのです。
2. なぜバッチ処理の再設計が必要なのか?
古いCOBOL資産の多くは、コンピュータの性能が今よりもずっと低かった時代に作られました。 そのため、現代のビジネス環境では以下のような課題が生まれています。
- 処理時間の限界: 昔は数時間で終わった処理が、データが増えたせいで十時間以上かかるようになり、翌朝の業務に間に合わないリスクがある。
- 複雑な依存関係: 「Aが終わらないとBが動けない」という鎖のような繋がりが複雑になりすぎて、どこかでエラーが出ると全てが止まってしまう。
- ブラックボックス化: 昔の担当者がいなくなり、中身がどう動いているか誰も正確に把握できていない。
これらの問題を解決し、最新のクラウド環境やサーバーで効率よく動くように作り直すことが、モダナイゼーション(現代化)の大きな目的です。
3. バッチ処理の再設計における3つのポイント
効率的なバッチ処理にするためには、ただプログラムを書き換えるだけでなく、全体の「流れ」を工夫する必要があります。
① 並列処理(パラレル処理)の導入
一つの長い行列を一つのレジでさばくのではなく、複数のレジで同時にさばくようにする方法です。 例えば、100万人分の計算を一人が行うのではなく、10万人分ずつ10台のコンピュータに分担させることで、全体の時間を大幅に短縮できます。
② 差分処理への切り替え
毎回「全てのデータ」を最初から最後まで計算し直すのではなく、「前回から変わった分だけ」を計算する方法です。 これにより、無駄な計算を省き、処理を圧倒的に速くすることができます。
③ 疎結合化(そけつごうか)
「疎結合」とは、プログラム同士の繋がりをあえて緩やかにすることです。 一つのプログラムが失敗しても、他の処理に影響を与えずに後からやり直しやすく設計します。 これにより、トラブルに強いバッチシステムが完成します。
4. 運用改善のアプローチ:自動化と監視
設計を見直した後は、それをどう「賢く動かすか」が重要です。これを運用改善と呼びます。
ジョブスケジューラの活用
人間が手動でボタンを押すのではなく、コンピュータが「Aが終わったら次はB、失敗したら管理者にメール」と自動で判断する司令塔(ジョブスケジューラ)を導入します。
可視化とモニタリング
「今、どの処理が全体の何パーセントまで終わったか」をグラフなどで見えるようにします。 遅れが出そうなときにすぐ気づけるようにするのがポイントです。
5. 再設計を意識したCOBOLのプログラム例
古い設計のバッチプログラムは、一つの巨大なループの中で何でもかんでも処理しようとします。 再設計では、処理を「入力」「加工」「出力」と明確に分けるように書くのが基本です。
*--- 再設計後のバッチプログラムの構造イメージ ---
PROCEDURE DIVISION.
MAIN-PROCESS.
PERFORM OPEN-FILES
* データを一行ずつ読み込んで処理する(ループ処理)
PERFORM UNTIL END-OF-FILE = "Y"
PERFORM READ-NEXT-DATA
IF END-OF-FILE NOT = "Y"
* 計算ロジックを別の部品(サブルーチン)に切り出す
PERFORM CALCULATION-LOGIC
PERFORM WRITE-RESULT
END-IF
END-PERFORM
PERFORM CLOSE-FILES
STOP RUN.
このように処理を分けることで、後で「計算ルールだけ変えたい」とか「処理を複数のコンピュータに分けたい」といった変更がしやすくなります。
6. 知っておきたい重要用語の解説
ここまでの説明で出てきた、覚えておくと便利な用語集です。
- JCL(ジェイシーエル)
- Job Control Languageの略。バッチ処理の「段取り」をコンピュータに伝えるための、プログラムの指示書のようなものです。
- リトライ処理
- 一時的なエラーで処理が止まったとき、自動で最初から(あるいは途中から)やり直す仕組みのこと。運用の手間を減らします。
- メインフレーム
- 銀行などで使われる超高性能な大型コンピュータ。COBOLのバッチ処理が最も得意な場所です。
- クラウド移行
- 自社で持っているコンピュータから、AmazonやGoogleなどの会社が提供するインターネット上のコンピュータへバッチ処理を移すこと。
7. 運用改善で失敗しないための注意点
バッチ処理の改善を行うとき、特に気をつけたいのが「テストデータの準備」です。 本番と同じくらい大量のデータを使わないと、実際に速くなったかどうかが確認できません。
また、「リカバリ設計」も重要です。 夜中にバッチが止まったとき、どこまで終わっていて、どこから再開すれば二重に計算せずに済むか。 この「後片付けとやり直しの手順」をしっかり決めておくことが、運用改善の成功に繋がります。
8. 未来のバッチ処理:リアルタイムとの融合
最近では、全てのデータを夜中にまとめて処理するのではなく、データの発生に合わせて少しずつバッチを動かす「マイクロバッチ」という考え方も増えています。
COBOLで培われた正確なバッチ処理のノウハウを、最新のクラウド技術と組み合わせることで、 「正確なのに速い」「止まらないのに柔軟」という最強のシステムを作ることが可能になります。
バッチ処理の再設計は、ただ古いものを直すだけではありません。 企業のデジタル資産を、次の世代でも通用する「攻めの武器」に変えるための、とても重要な挑戦なのです。