COBOLのモダナイゼーション成功事例と失敗事例!レガシー資産活用のポイント
生徒
「会社で使っている古いCOBOLのシステムを新しくするプロジェクトが始まるみたいなんです。でも、失敗したっていう怖い話も聞くので不安で…。」
先生
「それはモダナイゼーションのことですね。COBOLは長年、銀行や政府などの重要な場所で使われてきた信頼できる言語ですが、古くなった資産をどう活用するかは大きな課題です。」
生徒
「成功させるための秘訣や、逆にどういうときに失敗するのか、初心者にもわかりやすく教えてもらえますか?」
先生
「もちろんです!まずは基本から、事例を交えてじっくりと学んでいきましょう!」
1. COBOLとモダナイゼーションの基本を知ろう
まずは、COBOL(コボル)という言葉についておさらいしましょう。COBOLは、1959年に事務処理用に開発されたプログラミング言語です。英語に近い記述ができるため、当時は画期的な言語として世界中に広まりました。現在でも、銀行の勘定系システムや保険会社の契約管理、政府の基幹業務など、私たちの生活を支える裏側で現役で動いています。
次に、モダナイゼーションとは、これら長年使い続けてきた古いシステム(レガシー資産)を、最新の技術環境(クラウドや新しい言語など)に合わせて作り替えたり、修正したりすることを指します。単に古くなったものを捨てるのではなく、長年の知識やデータが詰まった貴重な財産を、これからも使えるように磨き直す作業のことです。
プログラミングを一度もやったことがない方向けに例えると、「歴史のある伝統的な日本家屋の、柱や梁といった良い部分は残しつつ、中身を最新の耐震構造やスマート家電が使えるようにリフォームする」というイメージです。基礎がしっかりしているからこそ、全部壊して建て替えるよりも効率的な場合があるのです。
2. なぜ今COBOLを新しくする必要があるのか
COBOLは非常に優れた言語ですが、時間の経過とともにいくつかの問題が出てきました。これを2025年の崖と呼ぶこともあります。主な理由は以下の通りです。
- 技術者の減少:COBOLを書けるベテランエンジニアが定年退職し、メンテナンスできる人がいなくなっています。
- コストの増大:古い専用の大型コンピューター(メインフレーム)の維持費は非常に高額です。
- 柔軟性の不足:現代のスマートフォンアプリやAI(人工知能)などと連携させるのが難しくなっています。
これらの問題を解決するために、多くの企業がCOBOLのレガシー資産をどうすべきか頭を悩ませています。ただ新しいものに変えればいいというわけではなく、今まで培ってきた正確な計算ロジック(ビジネスルール)を失わないことが重要です。
3. 成功事例から学ぶ資産活用のポイント
成功しているプロジェクトには共通点があります。それは、「一度に全部を変えようとしない」ことです。例えば、重要な計算を行うCOBOLのプログラムはそのままに、画面やデータのやり取りだけを最新のWEB技術に変える手法があります。
以下のコードは、COBOLで非常に単純な計算を行う例です。こうした確実な計算部分を資産として残し、活用するのが成功への近道です。
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. CALC-TAX.
DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 PRICE PIC 9(6) VALUE 1000.
01 TAX PIC 9(6).
01 TOTAL PIC 9(6).
PROCEDURE DIVISION.
COMPUTE TAX = PRICE * 0.10.
ADD PRICE TO TAX GIVING TOTAL.
DISPLAY "商品の合計金額は" TOTAL "円です。".
STOP RUN.
実行結果は以下のようになります。
商品の合計金額は001100円です。
このように、「何が現在のビジネスにとって重要か」を見極め、捨てる部分と残す部分を明確に分けることが成功の第一歩となります。
4. 失敗事例に共通するワナ
一方で、失敗してしまう事例も少なくありません。よくある失敗の原因は「現行踏襲(げんこうとうしゅう)」という考え方です。これは、今の古いシステムがどう動いているか完璧に理解しないまま、「とにかく今のシステムと全く同じ動きをするものを作ってくれ」と頼んでしまうことです。
古いCOBOLのプログラムの中には、もう使われていない処理や、複雑に絡み合った迷路のような命令(スパゲッティコード)が含まれていることが多々あります。それをそのまま最新の言語に翻訳しようとすると、バグ(プログラムのミス)が大量に発生し、結局動かなくなってしまうのです。
例えば、条件分岐が複雑になりすぎたプログラムの例を見てみましょう。
IF RANK = "A"
IF POINTS > 1000
MOVE 10 TO DISCOUNT
ELSE
MOVE 5 TO DISCOUNT
END-IF
ELSE
IF RANK = "B"
MOVE 3 TO DISCOUNT
ELSE
MOVE 0 TO DISCOUNT
END-IF
END-IF.
このように、中身が複雑に重なっていると、後から修正するのが大変です。失敗事例では、こうした複雑さを整理せずに進めてしまい、プロジェクトが途中で止まってしまいます。
5. マイグレーションとリライトの違い
モダナイゼーションの手法にはいくつか種類があります。パソコンに触れたことがない方向けに、代表的な2つを解説します。
- マイグレーション(移行):今のCOBOLプログラムを、なるべくそのままの形で別の環境(クラウドなど)へ引っ越しさせることです。家の場所は変えるけれど、家そのものはそのまま使うイメージです。
- リライト(書き換え):COBOLで書かれた内容を、Javaなどの最新の言語で書き直すことです。中身を最新の素材で作った新しい家を建てるイメージです。
リライトは一見良さそうに見えますが、COBOL独特の数値計算の正確さを再現するのが難しく、想定外の計算ミスが起きるリスクがあります。どちらを選ぶべきかは、そのシステムがどれだけ複雑かによります。
6. 条件分岐を使った簡単なCOBOLプログラム
ここで、COBOLでよく使われる条件分岐(IF文)の基本を学びましょう。プログラミング未経験の方でも、何をしようとしているか想像してみてください。これは、年齢によってメッセージを変えるシンプルな仕組みです。
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. CHECK-AGE.
DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 USER-AGE PIC 9(2).
PROCEDURE DIVISION.
MOVE 18 TO USER-AGE.
IF USER-AGE >= 18 THEN
DISPLAY "あなたは成人として扱われます。"
ELSE
DISPLAY "あなたは未成年です。"
END-IF.
STOP RUN.
実行結果は以下の通りです。
あなたは成人として扱われます。
このように、「もし~なら(IF)、これをする。そうでなければ(ELSE)、これをする」というルールを決めるのが、プログラミングの基本です。COBOLの資産を新しくするときも、こうした一つ一つのルールを丁寧に紐解いていく必要があります。
7. データの読み書きを理解する
COBOLが最も得意とするのは、大量のデータを順番に読み込んで処理することです。これをバッチ処理と呼びます。例えば、1万人分の会員データを読み込んで、一人ずつダイレクトメールを送る対象かどうか判断するような作業です。
以下のプログラムは、架空のファイルからデータを1件読み込むイメージを簡略化したものです。
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. READ-DATA.
DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 MEMBER-RECORD.
05 MEMBER-NAME PIC X(20) VALUE "田中 太郎".
05 MEMBER-ST PIC X(10) VALUE "継続".
PROCEDURE DIVISION.
DISPLAY "会員名:" MEMBER-NAME.
IF MEMBER-ST = "継続" THEN
DISPLAY "この会員はアクティブです。"
END-IF.
STOP RUN.
実行結果は以下のようになります。
会員名:田中 太郎
この会員はアクティブです。
こうしたデータの扱い方が独特なため、最新のシステムへ移行する際は、データの形式(型)を合わせる作業が非常に重要になります。ここを雑に扱うと、名前が文字化けしたり、数字がずれたりする失敗の原因になります。
8. 専門用語のやさしい解説
記事の中で出てきた、初心者には少し難しい言葉を解説します。
- メインフレーム:大きな企業が使っている、冷蔵庫のような巨大なコンピューターのことです。非常に頑丈で、めったに壊れません。
- レガシー資産:「レガシー」は遺産という意味です。長年使われてきた古いプログラムやデータのことを指します。
- バグ:プログラムの間違いのことです。昔のコンピューターの中に虫(バグ)が入って故障したことが名前の由来です。
- クラウド:自分の手元にコンピューターを置かず、インターネット経由で別の場所にある大きなコンピューターの機能を使う仕組みです。
これらの用語をなんとなく理解しておくだけでも、モダナイゼーションの話がぐっと分かりやすくなります。
9. 失敗を避けるためのステップ
これからモダナイゼーションに関わる、あるいは興味を持っている方が意識すべきステップは以下の通りです。
- 現状を可視化する:今どんなプログラムが動いているのか、図解して整理します。これを棚卸しと言います。
- ドキュメントを作る:プログラムの設計図を最新の状態に更新します。意外と古い設計図が残っていないことが多いのです。
- スモールスタート:まずは影響が少ない小さな部分から新しくしてみて、うまくいくかテストします。
パソコンを触ったことがない方でも、「まずは現状を正しく把握することが大切」という点は、お掃除や整理整頓と同じだと考えれば納得できるはずです。魔法のような解決策はありませんが、一歩ずつ丁寧に進めることが、何十億円という損失を出す失敗を防ぐ唯一の方法です。
10. 未来へつなぐCOBOLの知恵
COBOLは古いものですが、決して悪いものではありません。むしろ、何十年も間違いなく動き続けてきた実績は、最新の言語にも負けない価値があります。モダナイゼーションの目的は、単に古臭いものを捨てることではなく、その「確実性」という知恵を、現代の便利な技術と融合させることにあります。
成功事例の多くは、最新技術を使いこなす若手エンジニアと、ビジネスの仕組みを知り尽くしたベテランエンジニアが協力し合っています。お互いの強みを活かすことで、古い資産は新しい価値を生み出す源泉へと変わるのです。この記事が、皆さんのCOBOLに対する理解と、新しい挑戦へのきっかけになれば幸いです。