COBOL資産を最新Web技術と繋ぐ!API化(REST, SOAP)の仕組みと流れ
生徒
「先生、COBOLで作られた古いシステムを、最新のスマートフォンアプリから使えるようにしたいのですが、そんな魔法みたいな方法があるんですか?」
先生
「それは『API化』という方法を使えば可能です。COBOLという言葉しか話せないベテランシステムに、通訳をつけてあげるようなイメージですね。」
生徒
「通訳ですか?なんだか難しそうですが、RESTとかSOAPっていうのがその通訳の名前なんですか?」
先生
「その通り!それらはデータの受け渡しルールの名前です。これらを活用するモダナイゼーションの流れを、初心者の方にも分かりやすく解説しましょう。」
1. API化とは?基本概念を理解しよう
API(エーピーアイ)とは「Application Programming Interface」の略で、簡単に言うと「プログラム同士が情報をやり取りするための窓口」のことです。
パソコンを触ったことがない方への例えとして、レストランの「注文窓口」をイメージしてください。 お客さん(スマホアプリ)は、厨房(COBOLシステム)の中でどんなに複雑な調理が行われているか知らなくても、窓口(API)に「ハンバーグ一つください」と伝えるだけで料理を受け取ることができます。
長年、企業の奥深くで動いてきたCOBOL資産をこのように窓口化することで、中身を大きく作り直さなくても、最新のWebサービスやクラウドと連携できるようになります。これがモダナイゼーション(近代化)の非常に重要な技術です。
2. RESTとSOAPの違いを分かりやすく解説
API化を進める際には、窓口での「話し方のルール」を決めなければなりません。代表的なのがREST(レスト)とSOAP(ソープ)です。
REST(現代の主流)
非常にシンプルで、インターネット(Web)と相性が良いルールです。 「URL」を指定するだけでデータがもらえるため、スマホアプリ開発などで最もよく使われます。 データ形式は主に「JSON(ジェイソン)」という軽い形式を使います。
SOAP(伝統的なルール)
非常に厳格で、セキュリティや正確性を重視するルールです。 少し複雑ですが、銀行の取引など、間違いが絶対に許されない古いシステム同士の連携でよく使われてきました。 データ形式は「XML(エックスエムエル)」という詳細な形式を使います。
3. COBOL資産をAPI化するまでの具体的な流れ
実際にCOBOLのプログラムをAPIにするための手順を見ていきましょう。
① プログラムの部品化(モジュール化)
昔のCOBOLプログラムは、一つのファイルに何千行も書かれている「巨大な一塊」であることが多いです。 まずは、その中から「売上を計算する部分」「在庫を調べる部分」といった、外から使いたい特定の処理だけを切り出し、サブルーチン(部品)として整えます。
② インターフェースの定義
窓口で「どんな入力を受け取り、何を返すか」を決めます。 例えば、「社員番号を渡したら、その人の名前と住所を返す」という約束事を作ることです。
③ コネクタ・ツールの導入
COBOL自体はWebの言葉を話せないので、コネクタ(中継ツール)を使います。 このツールが、Webからのリクエストを受け取り、COBOLプログラムを実行し、その結果をWeb用の形式に変換して送り返してくれます。
4. API化に役立つCOBOLの書き方例
APIとして呼び出される側のプログラムは、画面を表示したりせず、データを受け取って計算することに専念するように書きます。
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. GET-ITEM-INFO.
DATA DIVISION.
LINKAGE SECTION.
* 外部から渡される入力データ(商品コード)
01 LK-ITEM-CODE PIC X(10).
* 外部へ返す出力データ(商品名と価格)
01 LK-ITEM-RESULT.
05 LK-NAME PIC X(30).
05 LK-PRICE PIC 9(08).
PROCEDURE DIVISION USING LK-ITEM-CODE LK-ITEM-RESULT.
MAIN-LOGIC.
* ここでデータベースなどを検索する想定
IF LK-ITEM-CODE = "A001" THEN
MOVE "高級メロン" TO LK-NAME
MOVE 5000 TO LK-PRICE
ELSE
MOVE "不明な商品" TO LK-NAME
MOVE 0 TO LK-PRICE
END-IF.
GOBACK.
この LINKAGE SECTION(リンケージセクション)という場所が、APIの窓口でデータの受け渡しを行う重要なポイントになります。
5. API化の大きなメリット:資産活用
なぜ今、世界中でCOBOLのAPI化が進んでいるのでしょうか。
- 既存資産の有効活用: 数十年かけて磨き上げた正確な計算ロジックを捨てずに済みます。
- 開発スピードの向上: 全てを新しく作るより、窓口だけ作る方が圧倒的に早く、安く済みます。
- マルチデバイス対応: PCだけでなく、タブレットやスマホ、さらにはIoT機器など、あらゆるものからCOBOLのデータにアクセスできるようになります。
6. 知っておきたい用語の解説
プログラミング未経験の方がつまずきやすい言葉を整理しました。
- JSON(ジェイソン)
- テキストでデータを表現する形式。
{"名前": "田中"}のような書き方で、Webの世界で最も人気があります。 - エンドポイント
- APIの窓口の住所(URL)のことです。ここを目指してデータが送られてきます。
- ラッパー
- 古いプログラムを「包み込んで(Wrap)」、新しい環境から使いやすく見せるための補助的なプログラムのことです。
7. API化における注意点:パフォーマンスとセキュリティ
API化は便利ですが、注意点もあります。 一つはパフォーマンス(処理速度)です。WebからCOBOLを呼び出す際、中継ツールを経由するため、ほんのわずかなタイムラグが生じます。大量のデータをやり取りする場合は、工夫が必要です。
もう一つはセキュリティです。 大切な社内データに外からアクセスできるようにするため、誰でも見られるわけではなく、「鍵(APIキーや認証)」を持った人だけがアクセスできるように厳重に守る必要があります。
8. 未来に繋がる「疎結合」なシステムへ
API化の最大の目的は、システム同士の結びつきを疎結合(そけつごう)にすることです。 「中身を直しても、窓口の形が変わらなければ外側には影響しない」という状態を作ることで、将来的にCOBOLの部分だけを別の新しい言語に置き換えることも容易になります。
一気に全てを変えるのは大変ですが、APIという窓口を一つずつ作っていくことが、安全でスマートなDX(デジタルトランスフォーメーション)への近道なのです。