カテゴリ: COBOL 更新日: 2026/02/08

COBOL資産を整理しよう!現行資産の棚卸しと影響範囲の把握方法

現行資産の棚卸しと影響範囲の把握方法
現行資産の棚卸しと影響範囲の把握方法

先生と生徒の会話形式で理解しよう

生徒

「先生、会社の古いCOBOLプログラムを新しくすることになったんですけど、何から始めたらいいのか全然わかりません!」

先生

「まずは、今どんなプログラムがどれだけあるのかを確認する『棚卸し』が必要です。大掃除の前に、押し入れの中身を全部出すようなものですね。」

生徒

「棚卸しですか。もし一部を書き換えたら、他の場所が壊れちゃったりしませんか?」

先生

「その心配をなくすために『影響範囲の把握』も一緒に行います。どこを直すとどこに響くか、地図を作る作業を詳しく見ていきましょう!」

1. 現行資産の棚卸しとは?

1. 現行資産の棚卸しとは?
1. 現行資産の棚卸しとは?

現行資産の棚卸し(げんこうしさんのたなおろし)とは、現在会社で動いているコンピュータプログラムやデータのリストを全て作り、その状態を正確に把握することです。

プログラミング未経験の方にとって、コンピュータの中身は魔法のように見えるかもしれません。しかし、実態は「ファイル」という書類の集まりです。 何十年も使っているシステムでは、もう誰も使っていない古いプログラムがそのまま残っていたり、同じような機能のプログラムが二つあったりすることがよくあります。

これらを整理せずに新しいシステムへ移行しようとすると、無駄な作業が増え、失敗の原因になります。まずは「何があるのか」を明確にすることが、モダナイゼーション(近代化)の第一歩です。

2. なぜ「棚卸し」が必要なのか

2. なぜ「棚卸し」が必要なのか
2. なぜ「棚卸し」が必要なのか

パソコンを触ったことがない方でも、冷蔵庫の掃除をイメージすれば簡単です。 賞味期限の切れた調味料や、いつ買ったかわからない食材が奥に眠っていませんか? それらを全部出して、「まだ食べられるもの(使うプログラム)」と「捨てるもの(使わないプログラム)」に分けるのが棚卸しです。

COBOLのシステムは歴史が長いため、当時の担当者がいなくなり、中身が誰もわからないブラックボックス(中身が見えない箱)になっていることが多々あります。 棚卸しをすることで、今の業務に本当に必要なプログラムだけを絞り込み、新しいシステムへの引っ越し費用を安く抑えることができるのです。

3. 資産の分類と「死蔵プログラム」の発見

3. 資産の分類と「死蔵プログラム」の発見
3. 資産の分類と「死蔵プログラム」の発見

棚卸しの最中に必ず見つかるのが、死蔵プログラム(しぞうぷろぐらむ)です。 これは、昔は使っていたけれど、今はもう誰も実行していないプログラムのことです。

これをどうやって見つけるかというと、「実行ログ」というコンピュータの履歴書を確認します。 過去一年間で一度も動いていないプログラムは、捨てる候補になります。

分類 状態 対応策
現役資産 毎日・毎月動いている 新しいシステムへ引き継ぐ
予備資産 年一度の決算などで動く 内容を整理して引き継ぐ
死蔵資産 一年以上動いていない この機会に削除する

4. 影響範囲の把握方法:資産の「繋がり」を見る

4. 影響範囲の把握方法:資産の「繋がり」を見る
4. 影響範囲の把握方法:資産の「繋がり」を見る

棚卸しが終わったら、次は影響範囲の把握(えいきょうはんいのはあく)です。 一つのプログラムを修正したときに、他のどのプログラムやデータに影響が出るかを調べる作業です。

COBOLのプログラムは、お互いにデータを貸し借りしたり、呼び出し合ったりして複雑に繋がっています。 例えば、「顧客住所」の桁数を増やすという小さな変更でも、それを使っている全てのプログラムを直さないと、システム全体が止まってしまいます。

これを調べるために、CRUD図(くらっどず)や「呼び出し階層図」という相関図を作成します。 これによって、「ここを直すと、あそこの計算が狂うかもしれない」という予知ができるようになります。

5. 資産可視化ツールの活用

5. 資産可視化ツールの活用
5. 資産可視化ツールの活用

何千、何万もあるプログラムを手作業で調べるのは不可能です。 そこで、資産可視化ツール(しさんかしきかつーる)という専用の道具を使います。

ツールを使うと、プログラムの中身をコンピュータが自動で解析し、「このボタンを押すと、このファイルが更新される」といった繋がりを絵にして見せてくれます。 パソコンの操作に慣れていない人でも、図解された「プログラムの地図」を見れば、全体像が把握しやすくなります。

6. 影響範囲を意識したプログラムの書き方

6. 影響範囲を意識したプログラムの書き方
6. 影響範囲を意識したプログラムの書き方

棚卸しで見つかった古いコードの中には、影響範囲がわかりにくい書き方がされているものがあります。 最新の設計では、影響を最小限にするために「データのやり取り」を明確にします。


*--- 古い書き方:どこで何が変わるか不明 ---
       DATA DIVISION.
       WORKING-STORAGE SECTION.
       01 GLOBAL-VAL PIC 9(05).
       
       PROCEDURE DIVISION.
           MOVE 100 TO GLOBAL-VAL.
           PERFORM SUB-RTN.
           * SUB-RTNの中でGLOBAL-VALが書き換わっているかも?
           DISPLAY GLOBAL-VAL.

*--- 現代的な書き方:受け渡しを明確にする ---
       PROCEDURE DIVISION.
           * 必要な値だけを渡して、結果をもらう
           CALL "SUB-PROG" USING GLOBAL-VAL.

このように、プログラム同士の「窓口」をはっきりさせることで、棚卸し後の影響調査が劇的に楽になります。

7. ドキュメント(設計書)との照合

7. ドキュメント(設計書)との照合
7. ドキュメント(設計書)との照合

棚卸しにおいて最大の壁となるのが、「プログラムの中身」と「設計書(紙の説明書)」が一致していないことです。 長年の修正でプログラムだけが更新され、説明書が古いまま放置されていることがよくあります。

この場合、プログラムそのものを正解として読み解くリバースエンジニアリング(逆解析)が必要になります。 「説明書にはこう書いてあるけど、実際はこう動いている」という差異を一つずつ埋めていく地道な作業が、安全な移行には欠かせません。

8. データの棚卸しも忘れずに

8. データの棚卸しも忘れずに
8. データの棚卸しも忘れずに

プログラムだけでなく、データの棚卸しも重要です。 「今は使っていない項目」や「昔のキャンペーンの時だけ使ったデータ」などが蓄積されていると、新しいデータベースへ移すときにエラーの原因になります。

データの型(数字なのか文字なのか)や、最大で何文字入るのかといった「定義」を正しく整理することで、新しいシステムでもスムーズにデータが扱えるようになります。

9. 影響範囲把握のチェックリスト

9. 影響範囲把握のチェックリスト
9. 影響範囲把握のチェックリスト

影響範囲を調べるときに、以下の項目を重点的に確認しましょう。

  • ファイル構造の変更: データの長さを変えたら、全てのプログラムを洗ったか?
  • 共通部品の修正: 多くの場所で使われている「計算の共通ルール」を直していないか?
  • 外部システムとの連携: 会社以外の銀行や取引先のシステムに送るデータに影響はないか?
  • 性能への影響: 修正によって処理時間が大幅に増えてしまわないか?

10. 棚卸しを成功させるためのチーム体制

10. 棚卸しを成功させるためのチーム体制
10. 棚卸しを成功させるためのチーム体制

棚卸しはIT部門だけで完結するものではありません。 「このプログラムは、まだ業務で使っていますか?」と実際に使っている現場の担当者に確認する必要があります。

パソコンに詳しくない方でも、「この作業は毎月必ずやっています」といった現場の声が、不要な資産を削ぎ落とすための強力な判断材料になります。 技術者と現場が協力し合うことが、健全なシステムへのリニューアルを成功させる唯一の道なのです。

11. 将来を見据えた資産管理

11. 将来を見据えた資産管理
11. 将来を見据えた資産管理

一度棚卸しをしてきれいにしたら、それを維持し続けることが大切です。 今後は「何を変更したか」を常に記録に残し、誰でもすぐに影響範囲がわかるような仕組みを整えましょう。

モダナイゼーションは一度きりのイベントではなく、システムを常に若々しく保つための「習慣」の始まりです。 今回作った「地図」を大切に更新し続けることで、20年後、30年後の担当者が困らない、持続可能なシステムを築くことができるのです。

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