COBOLの帳票出力を長く守る!メンテナンスと保守ポイントの秘訣
生徒
「先生、COBOLで作った帳票プログラムって、一度完成したらもう終わりですよね?」
先生
「実はそこからが本番なんです。制度が変わったり、消費税が変わったりするたびに直す必要が出てきます。」
生徒
「えっ、ずっと使い続けるために手入れが必要なんですか?」
先生
「その通り。これを『メンテナンス』や『保守(ほしゅ)』と呼びます。将来の自分が困らないためのコツを学びましょう!」
1. メンテナンスと保守とは?
プログラミングにおけるメンテナンス(保守)とは、作ったプログラムを長く安全に使い続けるために、点検したり、古くなった部分を新しくしたりする作業のことです。 車に例えると分かりやすいでしょう。新車を買っても、オイル交換をしたり車検を通したりしなければ、いつか動かなくなってしまいますよね。プログラムも同じです。
特にCOBOLが使われる銀行や役所のシステムは、10年、20年と非常に長い期間使われます。 その間に、「法律が変わって計算式を変えなきゃいけない」「新しいプリンタを導入したからレイアウトを微調整したい」といった要望が必ず出てきます。 このとき、誰が見ても分かりやすいように作っておくことが、メンテナンスのしやすさ(保守性)に繋がります。
2. 修正を楽にする「定数化」のテクニック
プログラムの中に、直接数字や文字を書き込むことを「ハードコーディング」と言います。 例えば、消費税率が変わるたびに、プログラムの中にある「0.10」という数字を何百箇所も探して直すのは大変ですよね。
そこで、定数(ていすう)という仕組みを使います。 プログラムの最初に「TAX-RATE(消費税率)は 0.10 です」と一箇所だけ決めておき、計算ではその名前を使います。 これなら、税率が変わっても一箇所を書き換えるだけで、すべての計算が自動的に新しい税率に更新されます。
3. 帳票レイアウトの変更に備える
帳票の見た目(レイアウト)は、時代とともに変わります。 「社名が長くなったので、表示枠を広げてほしい」「ロゴマークを入れる隙間を作ってほしい」といった依頼はよくあります。
COBOLでは、印刷する一行の構成を 01 や 05 といった階層構造で定義します。
このとき、項目と項目の間に FILLER(フィラー) という「予備の空白」を少し多めに入れておくのがコツです。
ギチギチに詰め込んで作ってしまうと、一文字増やしたいだけで全ての配置を計算し直さなければならなくなります。
4. 将来の自分を助ける「コメント」の書き方
プログラムには、命令とは別に「何のためにこの処理をしているか」というメモ書きを残せます。これをコメントと呼びます。 パソコンに詳しくない方は「メモなんて必要?」と思うかもしれませんが、半年後の自分は赤の他人です。
「なぜここで1円足しているのか」「なぜこの項目は表示しないのか」という理由は、コードを見ただけでは分かりません。 日本語でしっかりと理由を書き添えておくことで、後から修正する人が迷わずに済みます。
*--- 消費税計算処理 -----------------------------------*
* 2026/01/13 法改正対応により端数処理を切り捨てに変更
*----------------------------------------------------*
COMPUTE WS-TAX = WS-KINGAKU * TAX-RATE.
5. 帳票の「外字」と「特殊文字」の管理
古いシステムでは、普通の方法では表示できない特殊な漢字(外字)を使っていることがあります。 メンテナンスの際、この特殊な文字が新しいパソコン環境で表示されなくなるというトラブルがよく発生します。
どの項目にどんな特殊な文字が使われているのかをリスト化しておくことも、大切な保守作業の一つです。 「印刷してみたら名前が『?』になってしまった」というミスを防ぐために、文字コードの知識も少しずつ蓄えていきましょう。
6. 予備の項目を定義しておく重要性
データの受け渡しに使う箱(レコード)を定義するとき、最後に RESERVE(リザーブ) や FILLER という名前で「使っていない空きスペース」を設けておくのがプロの技です。
後から「やっぱり担当者コードも印刷したい」と言われたとき、この空きスペースがあれば、他のプログラムに影響を与えずに項目を追加できます。 住宅の間取りで言う「納戸(なんど)」や「物置」のような、余裕を持った設計が保守性を高めます。
7. 実行結果の「控え」を保管する
プログラムを直したあと、「正しく直ったか」をどうやって確認するでしょうか? 一番確実なのは、直す前の印刷物と、直した後の印刷物を並べて見比べることです。
これを現新比較(げんしんひかく)と呼びます。 保守作業では、常に「変えてはいけない部分が変わっていないか」に目を光らせる必要があります。 過去の正しい出力結果をサンプルとして大切に保管しておくことが、メンテナンスの品質を守ります。
8. 構造化して「スパゲッティ」を防ぐ
あちこちに命令が飛び火して、中身がぐちゃぐちゃに絡まったプログラムを「スパゲッティコード」と呼びます。 こうなると、どこを触るとどこが壊れるか分からず、誰も手が出せなくなります。
帳票出力であれば、「データ読み込み」「計算」「編集」「印刷」と、役割ごとに処理を小さな塊(モジュール)に分けて作りましょう。 「印刷のレイアウトだけ直したい」ときは「印刷」の塊だけを見れば良い状態にしておくのが、理想的な保守の形です。
9. ドキュメント(設計書)の更新
プログラムを書き換えたら、必ずセットで「設計書(せっけいしょ)」という説明図も更新します。 「中身は直したけど、説明書は古いまま」という状態は、保守における最大の落とし穴です。
次にそのプログラムを触る人が、設計書を信じて作業してしまい、大失敗する原因になります。 「コードと設計書は常に鏡合わせ」であることを意識しましょう。
10. エラーログの監視と分析
メンテナンスは壊れてからやるものだけではありません。 日頃から「いつもより処理に時間がかかっていないか」「変な警告メッセージが出ていないか」をチェックすることも保守です。
これを予防保守(よぼうほしゅ)と言います。 手遅れになる前に、小さな異変に気づいて手入れをすることで、システムはより長持ちし、信頼されるものになります。
11. 帳票の保存期間と法規制
出力した帳票そのものの管理も大切です。 法律によって、請求書は7年保存、といったルールが決まっています。 プログラムの保守だけでなく、「出力されたデータがどこに、どのような形式で保存されるのか」という運用全体の流れを把握しておくことも、COBOLエンジニアには求められます。
12. バージョン管理の重要性
「昨日の夜に直した内容を、やっぱり元に戻したい!」 そんなときに役立つのがバージョン管理です。 いつ、誰が、何の目的でどの行を書き換えたのかという履歴を残しておくことで、トラブルが起きたときでもすぐに以前の正常な状態へ戻すことができます。