カテゴリ: COBOL 更新日: 2026/02/01

COBOLのバッチ帳票出力パフォーマンス向上法!処理速度を劇的に変えるコツ

バッチ帳票出力のパフォーマンス向上法
バッチ帳票出力のパフォーマンス向上法

先生と生徒の会話形式で理解しよう

生徒

「先生、COBOLで作った帳票プログラムを実行したら、終わるまで何時間もかかってしまいました。もっと速くする方法はありますか?」

先生

「それは『パフォーマンス』の問題ですね。大量のデータを扱うバッチ処理では、少しの工夫で処理時間が半分以下になることもあるんですよ。」

生徒

「半分以下!?パソコンに詳しくない私でもできるような、簡単なスピードアップ術があるなら教えてほしいです!」

先生

「もちろんです。データの読み書きの回数を減らしたり、計算の仕方を工夫したりする基本戦略を見ていきましょう。」

1. バッチ処理とパフォーマンスとは?

1. バッチ処理とパフォーマンスとは?
1. バッチ処理とパフォーマンスとは?

まず、バッチ処理という言葉について説明します。これは、溜まった大量のデータを一気にまとめて処理する方法のことです。例えば、銀行がその日の全ての取引を夜中にまとめて計算し、明細表を作るような作業がこれに当たります。

そして、パフォーマンスとは、プログラムの「性能」や「処理効率」のことです。「パフォーマンスが高い」と言えば、短い時間でたくさんの仕事を片付けられる、優秀なプログラムという意味になります。

COBOLはもともと大量の数字を扱うのが得意ですが、作り方次第では、コンピュータが何度も同じ動作を繰り返してしまい、無駄な時間(オーバーヘッド)が発生してしまいます。この無駄を削ぎ落とすことが、高速化の鍵となります。

2. ファイルの読み書き回数を減らす「ブロック化」

2. ファイルの読み書き回数を減らす「ブロック化」
2. ファイルの読み書き回数を減らす「ブロック化」

プログラムが一番時間を使うのは、実は計算ではなく「ファイルの読み書き」です。 イメージしてみてください。倉庫から荷物を100個運ぶとき、1個ずつ往復して運ぶのと、台車を使って10個まとめて運ぶのでは、どちらが速いでしょうか?

答えはもちろん、まとめて運ぶ方ですよね。コンピュータの世界でも同じです。 磁気ディスクなどの記憶装置に1行ずつ書き込むのではなく、メモリという高速な作業場所にデータを溜めておき、ある程度の大きさになったらドサッと書き込む手法をブロック化(ブロッキング)と呼びます。

COBOLでは、ファイルを定義する場所(FD句)で BLOCK CONTAINS という命令を使うことで、この「一度に運ぶ量」を指定できます。これを適切に設定するだけで、帳票出力の速度は驚くほど向上します。

3. 帳票編集の無駄を省く

3. 帳票編集の無駄を省く
3. 帳票編集の無駄を省く

帳票出力では、数字の間にカンマを入れたり、「¥」マークを付けたりする「編集処理」を頻繁に行います。 これをデータの1行ごとに行うのは当然ですが、もし「同じ内容を何度も編集」していたら無駄ですよね。

例えば、ページのヘッダー(見出し部分)に印刷する「作成年月日」を考えてみましょう。 日付は1ページに一度だけ書き込めば良い情報です。しかし、プログラムの書き方によっては、データを1行印刷するたびに「今日の日付を編集してセットする」という命令が動いていることがあります。

「1回やれば十分なことは、繰り返し(ループ)の外に出す」。 これが鉄則です。

4. 高速化のためのサンプルコード

4. 高速化のためのサンプルコード
4. 高速化のためのサンプルコード

計算の回数を減らし、効率よく帳票を編集する工夫を取り入れた例を見てみましょう。


       IDENTIFICATION DIVISION.
       PROGRAM-ID. FAST-REPORT.

       DATA DIVISION.
       WORKING-STORAGE SECTION.
       * 高速化のポイント:繰り返しの中で何度も計算させない
       01  WS-FIXED-DATE    PIC X(10).
       01  WS-COUNT         PIC 9(08) VALUE 0.
       01  WS-TOTAL         PIC 9(12) VALUE 0.
       
       * 編集用の項目
       01  WS-REPORT-LINE.
           05  PRT-ID       PIC 9(05).
           05  FILLER       PIC X(01) VALUE SPACE.
           05  PRT-DATE     PIC X(10).

       PROCEDURE DIVISION.
       MAIN-LOGIC.
           * 1. 共通のデータはループの外で一度だけ準備する
           MOVE "2026/01/13" TO WS-FIXED-DATE.
           
           * 2. 大量データの処理(ループ)
           PERFORM 1000000 TIMES
               ADD 1 TO WS-COUNT
               
               * 悪い例:MOVE FUNCTION CURRENT-DATE TO ... (毎回時計を見る)
               * 良い例:準備済みの変数を使う
               MOVE WS-COUNT      TO PRT-ID
               MOVE WS-FIXED-DATE TO PRT-DATE
               
               * ここでファイルに書き込む処理などを行う
           END-PERFORM.

           STOP RUN.

5. メモリを有効活用する「テーブル処理」

5. メモリを有効活用する「テーブル処理」
5. メモリを有効活用する「テーブル処理」

帳票には、コード番号を名前に変換して表示することがよくあります(例:01なら「東京都」、02なら「神奈川県」)。 このとき、1行処理するたびにデータベースやファイルへ「01って何県ですか?」と聞きに行くのは非常に効率が悪いです。

そこで、プログラムが始まった瞬間に、あらかじめ変換用の表(テーブル)をメモリの上に読み込んでおきます。これをキャッシュと呼ぶこともあります。 手元のメモ帳をパッと見るのと、遠くの図書館まで調べに行くのとの違い、と言えば分かりやすいでしょうか。

メモリの上での検索は、ファイルへのアクセスに比べて何万倍も速いため、大量の帳票出力では必須のテクニックとなります。

6. 条件分岐の順番にこだわる

6. 条件分岐の順番にこだわる
6. 条件分岐の順番にこだわる

以前学習した IF 文も、実はパフォーマンスに関係します。 例えば、100万件のデータのうち、99万件が「通常顧客」で、1万件が「特別顧客」だとします。

もし IF 特別顧客 THEN ... ELSE IF 通常顧客 ... と書くと、コンピュータはほぼ全てのデータに対して、まず「特別顧客かな?」というチェックを無駄に行うことになります。 発生頻度が高い条件から順番に書く。これだけで、コンピュータが行う「比較」の回数が減り、わずかながら処理が速くなります。チリも積もれば山となるのです。

7. パフォーマンス向上のためのチェックリスト

7. パフォーマンス向上のためのチェックリスト
7. パフォーマンス向上のためのチェックリスト

プログラムが遅いと感じたら、以下のポイントを一つずつ確認してみましょう。

確認項目 改善のヒント
ファイルの読み書き回数 BLOCK CONTAINS句でまとめて処理しているか?
ループ内の無駄な計算 毎回同じ計算をしていないか?外に出せるものはないか?
外部アクセスの頻度 マスタデータはメモリ(テーブル)に持てないか?
不要なDISPLAY文 デバッグ用の画面表示が残ったままになっていないか?

特に「不要な DISPLAY 文(画面に文字を出す命令)」は盲点です。 画面に文字を出す処理は非常に重いため、本番で動かすプログラムからは、確認用のメッセージを消すだけで劇的に速くなることがあります。

8. 入出力(I/O)の並列化という考え方

8. 入出力(I/O)の並列化という考え方
8. 入出力(I/O)の並列化という考え方

もっと高度な話になると、並列処理(へいれつしょり)というものがあります。 一人が一つの窓口で作業するのではなく、複数の窓口を同時に開けて作業を分担するイメージです。

COBOLのプログラム自体を複数同時に動かしたり、読み込むファイルを分割したりすることで、全体の処理時間を短縮します。 初心者のうちは難しいかもしれませんが、「仕事を分担させれば速くなる」という理屈を知っておくだけでも、将来的な設計に役立ちます。

9. 数値計算のデータ型を最適化する

9. 数値計算のデータ型を最適化する
9. 数値計算のデータ型を最適化する

COBOLには USAGE IS COMP-3(内部十進数)や COMP(バイナリ)といった、コンピュータが計算しやすい「数字の持ち方」があります。 人間が見やすい形式(外部十進数)のままで計算させるよりも、コンピュータが得意な形に変換してから計算させるほうが、CPUという計算の脳みそへの負担が軽くなります。

特に、帳票で何万回も合計金額を加算するような場合は、このデータ型の選択がじわじわと効いてきます。

10. 最適化のやりすぎに注意!

10. 最適化のやりすぎに注意!
10. 最適化のやりすぎに注意!

最後に大切なことをお伝えします。速さを追求するあまり、プログラムの内容が複雑になりすぎて、人間が見て意味が分からなくなってしまっては本末転倒です。

プログラムは「正しく動くこと」が一番、次に「読みやすいこと」、その次が「速いこと」です。 まずは分かりやすいコードを書き、その上で、どうしても時間がかかって困る部分だけを、今回紹介したテクニックで改善していくのがプロの進め方です。

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